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決して惑わない事はない、という事。
昨年の12月以来のブッチャーズ。 今回のライブは、私にとって一生忘れられない思い出になりました。 そのライブについて書く前に、この場を借りて少しだけ吉村氏に謝罪をしておきたいと思います。 開演少し前に会場に着いた私たちでしたが、ふと前を見ると、吉村氏が近くの商店からお子様の手を引いて出て来られたのです。私と友人は完全に舞い上がってしまい、一も二もなく彼にサインを求めたのですが、彼は快くそれに応じて下さり、私のiPhoneケースにサインをして下さいました。しかし、少し時間が経って我が身を振り返ると、あの場でああして舞い上がってしまった事は、彼のお子さんにとって非常に心配りに欠ける態度だったのでは、と思い返すのです。たとえ、彼の事を大好きであったとしても、その彼に手を引かれている小さな子供の目線に立ちはだかる事は、いささか配慮に欠いたのでは、と思うのです。もちろん、サインを頂きたいのは偽らざる気持ちですが、少なくとももう少しお子さんに迷惑にならない形を取れたかもしれない、それを率先して出来るだけの年齢を重ねているのだし、それだけの分別を持つだけの経験が私にはあったのですが。 本当に、申し訳ありませんでした。 さて、そんなもの凄くハッピーだけど、少しビターな気持ちで始まったライブ。 それはもう相変わらず素晴らしいものでした。 恐らくは、バンド史上最もポピュラリティーを備え、尚かつ揺るがない魂を持ち、圧倒的なクオリティで生み出された"No Album 無題"の全曲を第一部に据え、これまでの名曲の数々がアンコールとして演奏された二時間半ほどの、轟音と狂気、優しさとハートのこもったライブでした。 私はライブの前にこの最新作を何度も聴き返していた中で、ライブで聴くと多分泣いてしまうだろう、と思っていた曲が一曲あったのです。 そして、その曲はこんな吉村氏のMCの後に歌い出されました。 「俺ももう43だよ。この無題はほんとに苦労した〜。だけど、なかなか世間の風は冷たくて・・・。」 M7"ノイズ"。 ややセンチメンタルなギターフレーズから始まる、この一曲に込められた彼の思いは、私の胸を締め付け、目頭を否応無く熱くさせました。 失礼な言い方かも知れませんが、もしかしたら、彼は少し惑っているのかもしれない。 これほどの素晴らしい作品なのに、そこらの下らない「ロック・バンド」と称する若者達の作品達よりも、恐らくは注目してもらえていないと言う事実に。 そして、自ら感じざるを得ない時の経過の早さと、守るべきものが出来たその責任感と。 私には、そんな彼の気持ちが痛いほど良く分かるのです。 なぜなら、私は彼と大きく年が変わらないから。それは即ち、彼に残された時間と、私に残された時間はそれほど変わらないと言うこと。 なぜなら、私にも彼と同じく守るべき大切なものがあるから。 自分の送ってきたこれまでの人生には何の後悔もありません。むしろ、誇りにさえ思える。 だけど。 不安で、怖くて、どうしようもなく戸惑っている。 かつて、孔子はそう言ったかもしれない。 私はそれは全くの嘘っぱちだと、そう思う。 しっかりと前を向いて、すっくと背筋を伸ばし、「冷たい風」の世間に立ち向かう彼を見ていて、そんな彼の歌を聴いて、そう思う。 きっと、惑わない事はない、という事が真理であると言うこと。 ライブの後。 もう一つ、忘れられない瞬間が訪れました。 上階から降りてきて、皆の握手に応じる彼。 私も、その列に並びました。 私の番が来ました。 私は彼に、ライブが最高であった事と同時に、自らもそうした年齢が近い事を伝え、 そしてやや場違いな言葉を、思わず叫んでいました。 「頑張ります」と。 いきなりそう言われた彼はもしかしたら、訳が分からなかったかも知れません。 知らんがな、そう思ったかも知れません。 iPhoneケースにして頂いたサインは、その「汚れが残らない」優秀なシリコンの機能があだになり、ライブ後には既に相当かすれてきていました。 しかし、決して悔しくはありません。なぜなら彼が握り返してくれたその力強い手から、私はもっと大切なものを得たから。 それは、これからも、ずっと惑い続ける、と言う勇気。
by unit7of9
| 2010-05-15 16:53
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