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文化人類学や神話学、構造主義に入る前のテキストに最適。
「マッドメン」 諸星大二郎 著 初刊行からかれこれ30年。しかし、本書の素晴らしさは、色あせるどころか、むしろ輝きを増している様な気さえします。 現在でも、「妖怪ハンター」シリーズや、各方面に不定期に掲載される短編を集めた作品を、売れっ子漫画家とは全く異なったペースで出し続けている諸星氏。どの作品を読んでも、その知識の深さや広範さに驚かされます。 そして言うまでもなく、「日本書紀」や「古事記」、或いは世界各地の民族伝承を、神話構造の面から再構成し、世界の在り方や人間の根幹を問う姿勢は揺らぐ事はありません。 本書「マッドメン」は、ニューギニアを舞台に、全身に謎の入れ墨をもつ少年コドワの存在を通して、原始の社会における交換儀礼や神話構造の原型を、日本の国生み神話と融合させ、最終的に壮大な現代社会批判やアメリカ(もしくはキリスト教)による世界的なモノカルチャーへの道への批判を行ってみせるという、おおよそ最近のこぢんまりとしたコミックには見られない冒険的かつ意欲的な作品です。 こう書くと、まるで難解なコミックに思えるかも知れませんが、氏の素晴らしいところは、そうした複雑な構成を持つ重層的な「物語」を論理的に、かつサスペンスフルに描く事が出来る事なのではないでしょうか。 この為、今後エリアーデの「神話学」、レヴィ=ストロースやその延長としての中沢新一氏などの「構造主義」関連の書物に取り組もうと考えている方にとっては、最高のインスピレーションを与えてくれる作品であると言えます。例えば、何の予備知識もなく、いきなりとりあえず「悲しき熱帯」を読めと言われても、これは恐らく学術書としては「文化人類学」以上の興奮を与えてくれる作品とは言い難いものですので(むしろ紀行文としての楽しさが勝る作品であると思います)、だから何が言いたいのか、「構造主義」とは一体なんぞや、と途方に暮れるのが関の山でしょう。あくまでフィールドワークのレポートとして「悲しき熱帯」を読んだ上で、その研究成果としての「野生の思考」に進む事で初めて、論理的に全体像がつかむ事が出来るのではないでしょうか。 その点、「野生の思考」の考え方を日本神話と融合させた本書は、諸星氏の作品中、(「暗黒神話」と並んで)最もそうした興味を最大限に引き立ててくれる作品であると言えます。 そして、今回新たに書き加えられた1巻の「鳥が森に帰る時」の最後の1コマが本作品を普遍的で本質的な内容を含んだ、現代にも通じるものにしているのです。
by unit7of9
| 2007-02-25 14:54
| 本
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